ある夏の思い出〜よつばの約束〜
死んだときのことを思い出した。




『大丈夫ですか?!聞こえますか?!』

『…はい』

『意識あります!お名前言えますか?』

『は…花岡…幸菜…』

ごほっと咳が出て、…血を吐いた。

『内臓が破裂しているかもしれない、CT用意急げ!』

『バイタル低下!』


手を伸ばして、誰かの手を掴んだ。

『!…どうされました?』

女の人の声。

何も考えられなくて、とりあえず伝えたいを口に出した。

『…私…死…んだら……もし…かさ……かさはら…あきと、という人…から、……』

一旦止まった。そして、続けた。

『れん…らくが…きたら、教えてあげて……くだ…さ…』

咳をすると、ごぼりと血が溢れる。

『…分かったわ、「かさはらあきと」さんね?』


その言葉を聞いて、安心して、…笑って、死んだのだ。
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