ある夏の思い出〜よつばの約束〜

気まぐれへの感謝

「ありがとうございました」


短い時が終わった彼女は、私に礼を言った。




「我が神」

「…なんだ」

「恐れ入りますが、変な顔をしていらっしゃる」

「…私には、分からないことが多すぎる」

「それでいいではありませんか」

「…なんだと?」

「それでいいではありませんか。分からないことがあって当然です。貴方は全てを知り尽くそうとしすぎる」

「…しかし、神として…」

「我が神よ、先代にも分からないことはあったのですよ」

「…?! 父上に…?」

「ええ」

「全てを知らなくても…良いのか…?」

「知らないことがあって当然です。貴方は頑張ろうとしすぎられる傾向があります」


知らないことがあっても良い。

まだ幼い当代––8代目の神は、年上の7代目のミカエルに言われて、それを学んだ。



ちなみに––これは余談だが、先代の神が早くに亡くなって、まだ幼いうちに神の座についた彼が昨今稀に見る名君として天界を治めることになるなんて、誰も考えもしなかった。
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