鶴さんの恩返し


そうして無我夢中で過ごし、電気が復旧しないことには仕事も再開できないということになり、帰宅を許された。


信号の明かりが消え、交通機能を失った道路。
公共機関など動いているはずもない。


いつもはバスで帰る距離を、歩いて帰る。


町は様変わりしており、ほとんどの建物は暗いまま。
混雑しているはずの道路は閑散としていて、営業を続けているお店は少なかった。


徒歩1時間ちょっとで自宅アパートへ帰ってきて、部屋に入る。


冷蔵庫の横に置いていた電子レンジが壊れ、食器も割れ、冷蔵庫を開けたら卵が1つ床に落ちた。
リビングもキッチンと同様の散らかりようで、いかに大きな揺れだったのかを表しているようだった。


カーテンレールが壁から外れていたり、クローゼットが勝手に開いたのか中のものが飛び出していて、ベッドも移動していて。


朝に見た景色とはおよそ程遠いものになっていた。


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