鶴さんの恩返し
3月はまだまだ寒くて。
夕方から雪がチラつくほど冷えていて、室内もその通り。
だけど電気が通っていないのでエアコンをつけることもできなくて、毛布をかぶってホッカイロで暖をとる。
照明もつかないので、趣味で集めていたアロマキャンドルに火を付けてテーブルに置いた。
食事はとっていないけれど、お腹は空かなかった。
そこまでの余裕は無かった。
━━━━━鶴さんに何度も電話やメールをしているけれど、返事がない。
それが気がかりだった。
でも、どこかで「きっと大丈夫だろう」と思っていた。
8階のオフィスにいた私が無事だったのだから、彼の職場は高層階にあるわけでもない。多少遅くまで残って後片付けなどはしているかもしれないが、そのうち帰ってくるだろうと思い込んでいた。
時刻は夜の10時。
朝までには帰ってきますように。
毛布にくるまりながら、のんきにそんなことを願っていた。