鶴さんの恩返し
そんなことがあった朝。
大地震に襲われたあの日の朝。
その夜。
鶴さんは帰ってこなかった。
仕事に持っていくバッグを持って出ていったから、てっきり仕事なんだと思っていたけれど。
毛布をかぶったまま、コルクボードに貼られた鶴さんのシフトを確認したら、仕事ではなく休みだった。
私と一緒にいるのが嫌になって、
私と朝ごはんを食べるのが嫌になって、
ひとりになりたくて、
だから出ていったんだ。
かけてもかけても、繋がらない電話。
メールも同じ。
きっとこの地震の事は全国でもトップニュースになっているだろうから、みんな心配して安否確認の連絡をしているのだろう。
それで、回線がパンクしているのだ。
そのせいで、鶴さんに繋がらないんだ。
どこかで鶴さんも、私を心配して電話をかけ続けてくれているかもしれない。
少し眠って、連絡を待とう。
私はベッドに横になり、余震が続く中ひとりぼっちで眠った。