鶴さんの恩返し
鶴さんは、一緒に過ごしていた頃となんら変わらない笑顔で私の手を優しく包み込んだ。
「小春さん。こんな僕だけど、結婚してくれませんか?」
「鶴さん……」
「もう僕は君を守ることも出来ないし、一緒に笑い合うことも出来ないし、本当の家族になることも出来ないし、ケンカすることも出来ないし、君を抱きしめることも出来なくなる。それでも、僕は小春さんを一生愛します。誓います」
彼の言葉をすべて聞いて、自分の涙がなんなのか気がついた。
これはきっと幸せの涙なんだ。
私は小さくうなずいて、泣きながら笑うというたぶん今までで一番ブサイクな表情で彼の手を握り返した。
鶴さんの手は、ほわんと温かかった。
「私も、鶴さんを一生愛します。大好きです」