鶴さんの恩返し
6
朝、目が覚めた。
時刻は6時。
私の隣に………………鶴さんは、いない。
体を起こしてベッドを抜け出す。
テーブルには昨日私が作った豪勢な料理。
鶴さんが平らげたはずなのに、全く手をつけられていない状態でそのまま残っていた。
ケーキも出しっぱなしにしていたせいか、生クリームがゆるくなっている。
鶴さんが昨日の夜に私に会いに来たという痕跡を見つけたくて、彼が着ていたダウンジャケットとかセーターも探したけれど、どこにも無い。
鶴さんがいたという事実が無くなったみたいに、何も変わらない状態だった。
もちろん、左手の薬指にも指輪など無い。
「夢だったのかな……」
思わず口から漏れた言葉。
夢のような夜だった。紛れもない本音。