鶴さんの恩返し
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今日は、鶴さんの誕生日。
本人は不在の誕生日。
それでも私は豪華な食事を作って、美味しいケーキを買って、ロウソクを灯して拍手して。
鶴さんの誕生日をお祝いする。
2人分でいいのだから、小さいケーキで構わない。
会社帰りに、駅前のカフェか併設された洋菓子店で4号のホールケーキを購入。
「チョコプレートに書くお名前はどうしますか?」
若い女性店員に差し出された名前の入っていないチョコプレートには、「Happy Birthday」の文字だけが印字されている。
「鶴さん、でお願いします。鶴は、千羽鶴の鶴です」
「かしこまりました」
数分後、その女性が名前の入ったチョコプレートを持ってきた。
綺麗な文字で「鶴さん」と書かれている。
「ありがとうございます」
私はケーキを受け取り、箱を大事に揺らしたり潰したりしないように気をつけながら、家路についた。