鶴さんの恩返し
アパートの間取りは1Kの、何の変哲もない八畳間のフローリング。
風通しの良いベランダは、プランターでさらに狭くなっているけれど気に入っている。
賃貸だから壁に穴はあけないでってあれだけお願いしたのに、鶴さんはあっさりと釘を打ちつけた。
ミニチュアバイクを飾る棚が欲しいのだと。
おかげで壁一面……とまでは行かないけれど、壁反面はバイクだらけ。
掃除するのがとっても大変なのに、そういうことを鶴さんは分かってないんだから。
ちょっとでも動かすと怒られたのを思い出して、時々ひとりで笑っている。
この部屋に住んで、もう7年経つ。
引っ越す気は、全く無い。
出来れば一生死ぬまで、ここで暮らしたいと思う。
━━━━━鶴さんが、いつ帰ってきてもいいように。