鶴さんの恩返し
キッチンで料理をこしらえる。
今日のメニューは、鶴さんが好きなものばかりにした。
ロールキャベツ、カボチャのスープ、鳥の唐揚げ、シーザーサラダの温玉乗せ、アサリのパスタ、それから、冷たくキンキンに冷やしたビール。
こんなに食べ切れるのかしら、と思うほどたくさん作った。
ペアの食器に料理を盛り付けて、部屋の真ん中に置いている楕円のテーブルに置いていった。
どれも出来立てなので、湯気が上がる。
お箸、フォーク、スプーン、グラス、食器は全部2人分。
私はお酒が飲めないから、いつもみたいに辛口のジンジャーエールをグラスに注ぐ。
ビールも向かいのグラスに並々に注いだ。
「…………鶴さん、どうかな。頑張って作ってみたんだけど」
肌触りの良いふかふかのクッションに正座して、しばし待つ。
返事が無いのは分かっているので、少し経ってからまた話し始める。
「……今まで誕生日をお祝いできなくてごめんね。5年経って、やっとこうしてお祝いだなんて。鶴さん怒ってるかな。……いや、笑ってるね、きっと」
逃げてきた5年間。
避けてきた5年間。
通り過ぎていった5年間。
どうして5年経って、ようやく誕生日をお祝いする気になったのか。
自分でもよく分からなかった。