鶴さんの恩返し
「あ、そうだ。ケーキもあるの」
冷蔵庫に入れておいたケーキの存在を思い出して、部屋から出てキッチンへ。
小さめの冷蔵庫から、会社帰りに買ったあのケーキを持ってきた。
4号の小ぶりのホールケーキが、テーブルの中央に置かれる。
なんだかこれで、本当に誕生日祝いのパーティーをしている気分になった。
「鶴さんは……何歳になるのかな」
あの日から数えて5年後の年齢?
それともあの日からひとつだけ年をとったことにするべき?
悩みに悩んで、結局何歳になるのかは考えるのをやめた。
5本だけサービスでつけてもらったロウソクをケーキに立てて、ライターで火を灯す。
鶴さんは、部屋を真っ暗にしてフーッてロウソクを吹き消すのが好きだったなぁ。
特別感があって、非日常的で、お祝いしてもらえてる喜びに満ち溢れるんだって。
火が灯っていくのを、子どもみたいに目を輝かせて追っていたのを思い出した。
胸が、じんわりする。