鶴さんの恩返し
部屋の照明をリモコンで落とし、真っ暗な中でロウソクの灯りがゆらゆらと揺れた。
「鶴さん、お誕生日おめでとう。大好き」
フッと短く息をはく。
ロウソクの火が、3本消えた。
残り2本のロウソクを、一気に吹き消す。
部屋が真っ暗になり、闇が訪れる。
「………………笑ってよ、鶴さん」
声が、震えた。
暗くて誰もいないから、泣いてもいいよね。
ひとりきりなんだもの。
ひとりぼっちなんだもの。
それなら、泣いても許してくれるよね。
「お願いだから、戻ってきて…………」
願っても願っても、届かない祈り。
もう数え切れないほど同じことを願い続けた。
だから、叶わないのは知っている。
しばらく暗闇でグズグズ泣いて、おもむろに照明のリモコンを手に取って部屋の電気をつけた。