なくした時間にいてくれた
母と父は医師のところに話を危機に行くと病室を出ていった。

一人残された私は椅子に座って、自分のおでこにあるガーゼに触れる。

おでこを助手席のヘッドにぶつけたらしい。その衝撃で意識が戻らない?

ううん、意識は戻っている。違う体に…どうしたら、自分の体に戻れるんだろう?

どうしたらお姉ちゃんの意識が戻ってくるんだろう。

今、お姉ちゃんの体をどこかにぶつけたらいい?

この中にいるのはお姉ちゃんじゃなくて、医師に私だって言ってみる?

私の話を信じて、元に戻してくれるだろうか。


「楓花、どうしたの? 頭痛いの?」


頭を抱えていたお姉ちゃんの頭を母が撫でてきた。


「ううん、大丈夫だよ」


話してるの意識は私なのに口から出てくるのはお姉ちゃんの声。

この違和感に昨日から何度か発狂したくなった。「違う!」と。
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