なくした時間にいてくれた
「今日、帰りに話せない?」

「帰り? 一緒に帰るということ?」

「まあ、そういうこと。方面も同じだし。嫌なら無理しなくてもいいけど」

「え、ううん。嫌じゃないよ。うん、一緒に帰ろう。うん、分かった。じゃあ、帰るときにね」


思いがけない誘いに緊張していた私の返事はぎこちないものだったけど、一緒に帰ることが決まった。何を話したいのだろうと放課後までずっとハラハラしていた。

今日の授業は模試対策ばかりなのに全然頭に入らなかった。こんなことに動揺していてどうするんだかと何度も思い、気合いを入れ直そうとしたが、全然ダメだった。

岡くんと話したいと思っていたこともすっかり忘れるくらい知奈のことばかりを考えていた。

昼休みに図書室に来た岡くんからも帰りに少し話さないかと誘われた。先約があるからと断ったが、夜に電話をかけるからと言ってくれた。

電話で話したことは一度もないから、そのことに私はまた動揺した。
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