なくした時間にいてくれた
知奈は私を見ないで、膝に置いたカバンを見ていた。俯いている知奈の表情は曇っている。


「大した怪我してないくせにとかよく知りもしないでひどいことを言っちゃったから。花実ちゃんが亡くなってしまうくらいなら、楓花も怪我していたよね?」

「私は特に……首と背中を打ったくらいで本当に大した怪我じゃなかったから大丈夫」

「楓花が事故にあって、休むと聞いた時はもし命にかかわるほどの大怪我だったらと考えて、どうしようと思ったの」

「どうしよう? なんで?」


今の知奈が私のことを心配するとは思えなかった。

知奈の顔を覗きこむように見る。私からの視線を感じたのかやっと顔をあげた知奈も私を見て、視線が交わった。

知奈の目は潤んでいた。


「本当はずっと謝ろうと思っていたの。楓花にされたことを人に話したら、それがありもしない噂になって広まってしまって、楓花が一人ぼっちになっていたから、私のせいだと思って謝ろうとしたんだけど、ずっと出来なくて……だから、謝ることが出来ないまま楓花がいなくなってしまったらどうしようと思った」
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