なくした時間にいてくれた
「あのね、今話すことじゃないとは思うんだけど……」

「うん?」

「私、彼氏が出来たの」

「えっ? そうなの? 誰なのか聞いてもいい?」


知奈がずっと好きなのは岡くんだと思っていた。でも、多分彼氏は岡くんではない。

ほんのり頬を赤くした知奈は恥ずかしそうにする。そんな知奈を見ると、よく話をしていた頃を思い出す。

秘密だよといつも私だけに話してくれるときの知奈の表情はいつもかわいかった。

今の知奈もかわいい。


「宇津井くんなの。二週間くらい前に告白されてオーケーしたんだ」

「宇津井くん? そんなんだ。おめでとう」


知奈は「ありがとう」と笑顔を見せた。

宇津井くんは私たちと同じクラスで岡くんといい勝負のイケメンくんだ。岡くんは爽やかな感じだけど、宇津井くんはキリッとしていて少し怖そうにも見えるイケメンだ。

話したことはないけど、見た目は怖そうでも実際は怖くないようだ。岡くんとも仲が良く、話している姿を見ると普通な感じだった。
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