なくした時間にいてくれた
知奈は私が話し掛けてきたから、今までのことをもう一度見直すきっかけになったと言っていた。

話し掛けたのは私ではなく花実だ。花実は私に断ることなく勝手な行動をしてしまったことを謝っていた。

花実……。

花実がいてくれたから、知奈が謝ってくれたよ。私になった時に頑張ってくれたから、今私は一人ではないと思えるようになったよ。

ありがとう。

私として生きていた花実は本当に大変だったと思う。友だちどころか話をする人もいないことに戸惑って、心細かったに違いない。

そんな中で私のことを思い、私が戻ったときに困らないようにとメッセージまで残してくれた。

ありがとうと言って、抱き締めたい。

小さい頃は何度もかわいい花実を抱き締めた。私が抱き締めるといつも嬉しそうに「お姉ちゃん、大好き」と同じように抱き締め返してくれた。

私も大好きだった。

今でも変わらず、大好き。

直接花実に会って、伝えたい。

叶わない願いだけど、空を見上げて願う。
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