なくした時間にいてくれた
私は後ろを向いた。後ろの席は唯一話し掛けてきて席を教えてくれた男子だった。


「あの、えっと……」


なにさんだ?

なんて呼ぼう……どうして、高校は名札を付けないのかな。せめて名札があれば呼べるのに。


「俺の名前も度忘れしちゃった? さっき松本さんが応えてくれたからびっくりしたよ。先生に指名されたときしか声を出さないじゃん」


先生に指名されたときしか声を出さない?

友だちやクラスメートと話すことはないの?

部活には入っていないから部活の友だちはいないと思うけど、誰とも話さないのはおかしい。


「あ、で、俺は岡祐介おかゆうすけ)。もう忘れないでね」


屈託ない笑顔を見せる星くんは、ぱっちりした二重の目が印象的で鼻とか口とかの他のパーツも整っている。

気さくに話しかける感じも含めて、全体的な印象からモテそうな人だと思った。


「あの、変なことを聞いてもいいですか?」

「いいけど、何で敬語?」
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