なくした時間にいてくれた
「松本さん、祐介のためにずっといてくれてありがとう。でも、悪いんだけどもう面会時間が終わりで家族以外は帰るようにして欲しいと看護士さんからさっき言われたの」

「えっ、そうなんですか……」

「私も目が覚めるまでいてあげて欲しいと思うんだけど、病院の決まりらしくて。ごめんなさいね」


岡くんのも母さんからの言葉に私は一瞬言葉を失ってしまう。

目が覚めるまではいるつもりだったけど、わがままは言えない。病院のルールに従わなくてはならない。

岡くんの家族が申し訳なさそうな顔をしているから、私は持っていたカバンをしっかりと握りしめた。

帰ろう。


「分かりました。明日の面会時間に来ます。あの、祐介くんの目が覚めたら、伝えてもらえますか。明日、絶対に来るからと」

「うん、分かった。俺が責任持って伝えるよ。祐介も松本さんに会いたいと思うだろうから来てあげてね」

「はい」


外が真っ暗になっていたからお兄さんが家まで送ると言ってくれたけど、断ってタクシーで帰った。

お兄さんだって岡くんが目覚めた時にそばにいたいだろうから。

明日になれば会える。
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