なくした時間にいてくれた
怪我人とは思えない爽やかな笑顔の岡くんに私は頬を膨らませた。


「誰もいないの?」

「うん。面会時間すぐに松本さんが来るから、その間は来ないでと言っておいた。二人だけで話がしたかったから」


岡くんに会えたことだけで嬉しいのに、二人だけでと気遣ってくれるなんてもっと嬉しくなった。

ベッド横の椅子に座って、岡くんの右手を握った。昨日と同じ温かさが伝わってくる。

本当に生きている。


「松本さん?」

「大げさかもしれないけど、生きていてくれて嬉しい」

「うん。俺も生きてて良かったよ。ぶつかった瞬間、まじで死ぬ!と思ったからね」

「うん、良かった」


握る私の手を岡くんがさらに左手を重ねて握ってきた。左手には包帯が巻かれている。


「痛くない?」

「痛いけど、大丈夫だよ。10針とか縫ったらしいけどね」

「そんなにも?」

「うん。それよりも……松本さんに聞いてほしいことがあるんだ。ちょっと不思議なことなんだけど」
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