なくした時間にいてくれた
いけない……年上の人だからとつい敬語が出てしまったけど、今は同い年だった。


「あ、いやー、あのね。あの、私って誰と仲がいいのかなーとか思ったりして」

「えっ? どれだけ記憶をなくしてるの? 出てきて大丈夫なの?」


岡くんが心配するのも分かる。私が岡くんだったら同じように心配する。おかしなことばかり言っているから。でも、聞かないと何も分からない。

今、岡くん以外に聞ける人もいない。

その時、ガラッとドアが開いて担任の先生らしき男性が入ってきた。

父くらいの年齢だと思われるけど、父よりがっしりとした体型だ。


「出欠をとるぞ」


名簿順に名前を呼んでいく。


「松本瘋花」と呼ばれて返事をした。私の返事におかしな部分はなかったようで、そのまま進められていった。


一時間目は数学だった。

三年生の数学なんて分からない。一年生のだって全部理解できていないのに、分かるわけがない。
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