なくした時間にいてくれた
岡くんは自分が言ったことをやっと思い出し、突然大きな声を出した。
その声が廊下にまで響いたらしくて、たまたま近くを歩いていた看護士さんが入ってきて「病院では静かにしてくださいね」と注意されてしまう。
私たちは「すみません」と肩を竦めて謝った。看護士さんが出ていってから顔を見合わせて小さく笑う。
「俺、楓花って言ったよね?」
「うん。言ったよね? 突然普通に言うからビックリしちゃった」
「昨日、兄さんが楓花ちゃん、かわいいよなーって言うからさ……何で俺が松本さんって呼んでいるのに名前で言うんだよと文句言ったら、お前も名前で言えばいいじゃないかと言われて」
「そうだったの?」
「うん。で、絶対に今日言おうと思って朝からずっと楓花、楓花と何度も繰り返していたんだけど」
繰り返し練習していても、顔を見たらいつものように言ってしまったらしい。
それなのに焦っていたせいですんなり言えてしまうなんておもしろい。
その声が廊下にまで響いたらしくて、たまたま近くを歩いていた看護士さんが入ってきて「病院では静かにしてくださいね」と注意されてしまう。
私たちは「すみません」と肩を竦めて謝った。看護士さんが出ていってから顔を見合わせて小さく笑う。
「俺、楓花って言ったよね?」
「うん。言ったよね? 突然普通に言うからビックリしちゃった」
「昨日、兄さんが楓花ちゃん、かわいいよなーって言うからさ……何で俺が松本さんって呼んでいるのに名前で言うんだよと文句言ったら、お前も名前で言えばいいじゃないかと言われて」
「そうだったの?」
「うん。で、絶対に今日言おうと思って朝からずっと楓花、楓花と何度も繰り返していたんだけど」
繰り返し練習していても、顔を見たらいつものように言ってしまったらしい。
それなのに焦っていたせいですんなり言えてしまうなんておもしろい。