なくした時間にいてくれた
私、そんな恥ずかしくなること言ったかな? 名前間違えてないよね?


「その不意打ち、ものすごくきたんだけど」

「え? 来た? 何がどこに?」

「ここがきゅーんと締め付けられた。名前で呼ばれるのって、嬉しいものなんだね」


祐介くんはここと、心臓辺りを指差す。男の子でも胸がきゅんとなるみたいだ。真っ赤になる祐介くんはかわいい。

それから私たちはお互いの名前をちゃんと入れながら話をした。


「そうだ! 忘れるところだった、暇しているだろうから退屈しのぎになるかなと本を持ってきたの。これなんだけど、感動ものでおすすめなの。もしこういうの苦手じゃなかったら、読んでみて」

「へー、感動ものなんだ。自分では選ぶことないジャンルだけど、楓花のおすすめなら読んでみるよ」

「うん。私だけじゃなくて、花実も読んで気に入っていた本なの」

「花実ちゃんも? そうか、松本姉妹おすすめなら絶対に読まなくちゃだね。あれ……これ、なんだろう? 何か挟まっているけど」
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