なくした時間にいてくれた
その時、後ろから肩を叩かれる。振り向くと岡くんが不思議そうな顔をしていた。

なんだろう?

なにか変なことをしちゃった?


「あのさ、いつものところに行かないの?」

「えっ?」

「いつも図書室に行ってたよね?」

「あ、うん。これから行くところ」


そうか、図書室で食べていたんだ。しかし、慌ててお弁当を持って廊下に出たまではいいけど、図書室がどこにあるか分からない。

なぜこういう時には勝手に体が動いてくれないんだろう。


「こっちだよ。俺も本を返しに行くから一緒に行こう」


またもや岡くんに助けられた。


「まだ思い出せないことがあるの?」

「うん、お恥ずかしいことに」

「あはは。なんか松本さんらしくないけど、困ったことがあったら何でも聞いてよ」


わあ、なんて心強いお言葉だ。やっぱり岡くんはいい人だな。

図書室は隣の棟の2階にあった。こちらの棟に足を踏み入れるのは始めてだけど、図書室に入ったときになんだか懐かしい感じがした。
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