なくした時間にいてくれた
学校で私と話すと私の印象が悪くなるからと岡くんは遠慮してくれている。

もちろん私から話し掛けることもない。

私たちは学校以外のところで話すようにしている。学校では今みたいに人目を気にしながら話すことしか出来ない。


「うーん、じゃあ戻るかな。もし帰るなら連絡だけちょうだい」


岡くんが小さく手を上げたから「了解」と私も手を上げた。

図書室を出ていく岡くんの後ろ姿を見送ってから、読みかけの本にしおりを挟んだ。

お姉ちゃんはこの学校に来て、楽しいと思うことあったかな。

誰とも話さない学校にいて嫌じゃなかったのかな。行きたくないと思うことはなかったのかな。

お姉ちゃんがどんな思いでこの学校を通っていたのかは分からない。でも、一度だけ志望校を決める上での参考にと聞いたことがある。

その時は「高校は大学に行くまでの一つの過程だから、もし大学まで行こうと思うなら実績があるところがいいと思う」とアドバイスしてくれた。

私は学校行事が楽しいかどうか聞いたけど、「そんなのどこも変わらないよ」とだけ言われた。
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