なくした時間にいてくれた
この高校が楽しいとも楽しくないとも言わなかったけど、私が別の高校を受けると話した時は安心したような表情を見せた。

あれは、この学校での自分を知られないですむと思ったからなのかも。

でも、なんでお姉ちゃんが一人でいることになっているのだろう。中学の時に仲の良かった友だちも同じ高校に合格出来たと喜んでいた覚えがある。

その友だちとはどうなっているのかな。

その友だちが誰だったか知る方法は何かないかな。部屋に写真とかなかったかな。お姉ちゃんの部屋の物は必要最低限のものしか触れていない。

探してみようかな。

岡くんに『帰るね』とメッセージを送って、私は友だちを知る手掛かりを探そうと賑やかな学校を出た。


家に帰るとちょうど出掛けるところだったのかカバンを手に持っていた母と廊下で会う。


「おかえり。早いね」

「うん。三年は午後になったら解散で自由に帰っていいことになってるから帰ってきちゃった。今から病院行くの?」

「うん。楓花も行く?」

「んー、勉強するからいい。気を付けて行ってきてね。あ、そうだ。中間テストの成績表をテーブルに置いておくからあとで見ておいてね」
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