なくした時間にいてくれた
これは誰の字だろう。何で私ではない人が私のノートに書いているの?ノートを間違えて使った?

それもまたおかしな話だ。他のノートも見てみるが、どれも途中から筆跡が違うし、もちろん私が書いた記憶もない。

やっぱり記憶喪失かな。

他になにか変なものはないかとカバンを漁るとスマホが出てきたが、私の物ではない。これは花実のスマホだ。

花実の好きなキャラクターのケースに入っている。電源は入るけど、パスワードが分からないからそこから先には進めなかった。

無理矢理見ることはしたくないので、カバンの中に戻してもう一度ノートを見る。いったい誰が書いたのだろう。


「楓花、明日から一週間学校を休みますと先生に電話をしておいたからね」

「うん、ありがとう」


ノートとにらめっこしていたら、母が入ってきた。母の目は腫れている。娘を亡くしたんだもの、悲しいのは当然だ。
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