なくした時間にいてくれた
どんなに後悔してもどんなに願っても時は戻らないし、もう会えない。


大事な家族を亡くした私たち家族は表現しきれないほどの喪失感の中、花実の葬儀を終えて家に戻った。

誰も言葉を発しない。何を話したらいいのか何をしたらいいのか分からない。

私は肩を落として椅子に座る父と母を見てからそっと自分の部屋に行き、ベッドに横たわった。学校には明後日から行く予定となっている。

そうだ、スマホ。

事故にあってから触っていなかったスマホは机の引き出しの中にあった。

これも私が感じた違和感の一つ。だけど、変だと感じながらも手に取ることなく数日が過ぎていた。ここ二年くらいは家族との連絡にしか使っていないものだ。

友だちというものをある事情により無くしてしまったから、スマホを持つこと自体が苦痛になった。友だちと楽しく会話をしていた道具だから、会話が出来なくなり不要な物となった。
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