なくした時間にいてくれた
三年で同じクラスになってからは最初に挨拶をして、その後話したのは覚えている限りでは一度だけだ。

一人で図書室にいる私に一度だけ話しかけてきたから一応答えたけど、会話という会話ではなかった。

たいした内容ではなく、当たり障りのない会話で短かった。もっと話したそうな様子が岡くんからは伝わってきていたけれど、私が遮断した。

波風立てたくなく、穏やかに一年を過ごしたいと望んでいたからだ。誰とも関わらないで過ごすのは寂しかったけれど、不快なことを言われたくなかった。

一年の時に陰で言われて、それが瞬く間に多くの人に伝わり、誰もが私に冷たい視線を向けてきた。

「人の彼氏とか好きな人を横取りするんだって」
「横取りが趣味らしいから近寄らないほうがいい」

通りすがりに聞こえたひそひそ話はいたたまれない気持ちにさせた。そんなことしない!と反論したい気持ちもあったが、噂の出所が分かっていたから何も言えなかった。
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