なくした時間にいてくれた
何もしていないから、言われた言葉に呆然となった。身に覚えはないけれど、気付かないところで何かしてしまったのかと考えた。

唯一思い当たることは一つだけだったけど、それが裏切り行為になるとは結びつかなかった。

でも、「岡くんから聞いたんだから」と言った知奈の言葉から考えられるのはそれだけだった。あの時しか話をしていなかったから。

思い出したくないことが思い出される。涙を浮かばせながらも私を睨む知奈の目は一生忘れられないかもしれない。

人からあんな目で睨まれたのは初めてだった。

それから私をことごとく避けるから、私から話そうとする気持ちもなくなった。一度溝が入ってしまった関係を修復するのは無理だと悟り、ならば知奈の目障りにならないよう目立たないようにしていようと思った。

それで新しく友だちが出来ればいいと思ったけど、そんなに世の中はうまくいかない。

知奈があることないことを言いふらしたのか、聞いた話が多くの人に伝わっていくにつれて膨らんでしまったのか……真実ではない噂が広まっていた。
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