遠回りして気付いた想い
「亜耶!」
声がして、そちらを向けばお兄ちゃんが手を振って歩いてくる。横には、婚約者の由華さんの姿もある。
「ゴメン、待ちくたびれただろ」
お兄ちゃんが、軽く頭を下げてきた。
「ううん、私も今来たところだよ」
そう返してた。
「こんばんは、由華さん」
隣に居る由華さんにも挨拶する。
「亜耶ちゃん、こんばんは。今日は、ごめんね」
由華さんが申し訳なさそうに眉尻を落として言う。
「ううん。勉強の息抜きになりますから…。ちょっと兄を借りますね」
私はそう言って、お兄ちゃんの腕を引っ張る。
由華さんが、不思議そうな顔をして、こちらを見てる。
「何だよ」
お兄ちゃんが怪訝そうに言いながら付いてくる。
由華さんから少し離れたところで。
「お兄ちゃん、私手持ちないんだけど……」
小声で言えば。
「そんなの気にするな。大人が出すからな。まぁ、亜耶のための財布は、確実に一つはあるから……」
何て、意味深な言葉を吐き出すお兄ちゃん。
訳のわからないまま、由華さんの元に戻れば、お兄ちゃんのスマホが鳴り出した。
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