海老蟹の夏休み
――きみを見たことがある。
いきなり言われて面食らう朋絵に、彼は自己紹介をした。
白衣の男は穂菜山水族館に勤める学芸員で、名前は沢木(さわき)克巳(かつみ)という。
「僕は大学時代、この水族館へ研修に来ていた。夏休み中はイベントの手伝いもして、主にザリガニ釣りの係だった」
それは8年前のことだそうで、朋絵が小学4年の頃だ。
沢木は当時大学3年生で、年齢は21歳。
A大理学部の生物科学科に在籍し、水辺の生き物について勉強していたとのこと。
「きみは、ザリガニ釣りに夢中になってた子どもだ」
夏休み期間には大勢の子どもが訪れるし、一人一人の顔を覚えられるはずもない。朋絵のことは、よほど印象に残っていたのだろう。
思わぬ人物の登場に、朋絵はどきどきした。子ども時代の夏休みに二人は遭遇していた。輝かしい思い出を共有する人物と言っては大袈裟だろうか。
突然声をかけられてびっくりしたけれど、嬉しくもある。
ここに来たことが無意味な気がして、実は落ち込んでいたから。
いきなり言われて面食らう朋絵に、彼は自己紹介をした。
白衣の男は穂菜山水族館に勤める学芸員で、名前は沢木(さわき)克巳(かつみ)という。
「僕は大学時代、この水族館へ研修に来ていた。夏休み中はイベントの手伝いもして、主にザリガニ釣りの係だった」
それは8年前のことだそうで、朋絵が小学4年の頃だ。
沢木は当時大学3年生で、年齢は21歳。
A大理学部の生物科学科に在籍し、水辺の生き物について勉強していたとのこと。
「きみは、ザリガニ釣りに夢中になってた子どもだ」
夏休み期間には大勢の子どもが訪れるし、一人一人の顔を覚えられるはずもない。朋絵のことは、よほど印象に残っていたのだろう。
思わぬ人物の登場に、朋絵はどきどきした。子ども時代の夏休みに二人は遭遇していた。輝かしい思い出を共有する人物と言っては大袈裟だろうか。
突然声をかけられてびっくりしたけれど、嬉しくもある。
ここに来たことが無意味な気がして、実は落ち込んでいたから。