【禁后-パンドラ-】
どう読むのかは最後までわからなかったけど、その町の若い人達の間では『パンドラ』と呼ばれていた。

その町は静かでのどかな田舎町。

目立った遊び場などもない寂れた町だったが、1つだけとても目を引くものがあった。

町の外れ、田んぼが延々と続く道にぽつんと建っている一軒の空き家。

長らく誰も住んでいなかったようでかなりオンボロ、古臭い田舎町の中でも一際古さを感じさせるような家だった。

それだけなら単なる古い空き家…で終わりなのだけど、目を引く理由があった。

1つは町の大人達の過剰な反応。

その空き家の話をしようとするだけで厳しく叱られ、時には引っ叩かれてまで怒られる事もあったという。

どの家の子供も同じ。

もう1つは、その空き家には何故か玄関が無かったという事。

窓やガラス戸はあったのだけど、出入口となる玄関が無かった。

以前に誰かが住んでいたとしたら、どうやって出入りしていたのか?

わざわざ窓やガラス戸から出入りしてたのか?

そういった謎めいた要素が興味をそそり、いつからか勝手に付けられた『パンドラ』という呼び名も相まって、子供達の一番の話題になっていたらしい。

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