【禁后-パンドラ-】
夫の姿はない。

何が起こったのか全く分からず、娘の体に泣き縋るしか出来なかった。

異変に気付いた近所の人達がすぐに駆け付けるも、八千代はただずっと貴子に泣き縋っていたそうだ。

状況が飲み込めなかった住民達は、ひとまず八千代の両親に知らせる事にし、何人かは八千代の夫を探しに出ていった。

この時、八千代を1人にしてしまった。

その晩のうちに、八千代は貴子の傍で自害した。

住民達が八千代の両親に知らせたところ、現場の状況を聞いた両親は落ち着いた様子だった。

「想像はつく。八千代から聞いていた儀式を試そうとしたんだろ。八千代には詳しく話した事はないから、断片的な情報しか分からんかった筈だが、貴子が10歳になるまで待っていやがったな」

そう言って、八千代の家へ向かった。

八千代の家に着くと、さっきまで泣き縋っていた八千代も死んでいる…住民達はただ愕然とするしかなかった。

八千代の両親は終始落ち着いたまま、『わしらが出てくるまで誰も入ってくるな』と言い、しばらく出てこなかったそうだ。

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