【禁后-パンドラ-】
その後、老朽化などの理由でどうしても取り壊す事になった際、初めて中に何があるかを住民達は知った。

そこにあったのは僕達が見たもの、あの鏡台と髪だった。

八千代の家は2階がなかったので、玄関を開けた目の前に並んで置かれていたそうだ。

八千代の両親がどうやったのかはわからないが、やはり形を成したままの髪だった。

これが呪いであると悟った住民達は出来る限り慎重に運び出し、新しく建てた空き家の中へと移した。

この時、誤って引き出しの中身を見てしまったそうだが、何も起こらなかったそうだ。

これに関しては、供養をしていた人達だったからでは?という事になっている。

空き家は町から少し離れた場所に建てられ、玄関がないのは出入りする家ではないから、窓・ガラス戸は日当たりや風通しなど供養の気持ちからだという事だった。

こうして誰も入ってはいけない家として町全体で伝えられていき、大人達だけが知る秘密となったのだ。

ここまでが、あの鏡台と髪の話。

鏡台と髪は八千代と貴子という母娘のものであり、言葉は隠し名として付けられた名前だった。

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