キエルビト

時は流れ9XX年



 この世界に3つしか存在しない"能力研究所"をご存知だろうか。
その名の通り、"能力"を"研究"しているところだ。
 もちろん、名前からしてやることすべてが違法である。
 だが、許されている。否、黙認されている。政府が、"戦争が起きた時は必ず能力者に加勢させること"と引き換えに、悲惨な行いを見過ごすことにしたのである。それほど"能力者"の力は絶大だったのだ。


 研究所と言っても、具体的になにをしているのか…
簡単にまとめると、"研究で能力を生み出し、人体に埋め込む"ことをしている。
 能力を得たものは"神"として崇められ、"人"ではなくなる。その"研究"の様子は怪物を人が科学で抑えているようだった。
 

  
  もちろん、誰もがなりたくてなれるものじゃない。
 何万分の1という確率で能力を入れることのできる器をもった子どもが生まれる。だが、その器があったとしても、特に体に変わりはない。なので、"表"では生まれてすぐに"能力者検査"を行う。
 

 数値が高かった者は、"選ばれし者"とし、表の世界から抹消され、研究所に連れてこられる。


 けれど、数値が高くても、それは"限りなく能力者候補"にちかいだけで、実際には器がない場合が大半だ。
 
 さらにいうと、検査に引っかかるのもごく少数な上、器を持ち、なおかつ能力を完全に一致させるなんて、それこそ神業に近いものなのである。
 
 今までで完成した能力者は、無数の屍に対し、たったの十人。
その十人がほぼ同じ年代に生まれたので、この時を能力者たちは自らの"黄金時代"だと形容していた。
 十人目によって能力者狩りが始まることも知らずに…
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