あの日あの時あの場所で。
「…助けてくれるの」
いつもいつも、私が助けてって思ってると、来てくれるの…。
なんで…。
「え?それは…」
「一緒に帰る約束、破ったの私なのに…。なんで、帰んないわけ…?」
「破ったの…?」
「…は?」
「俺は破られたなんて思ってないよ?ただ、莉子が来なかったからなにかあったのかな~?って思って探してただけ」
「………」
「で、探してたら廊下から莉子を見つけた」
「…っ。もぉ、陵太…」
「ほんと大丈夫?立てる?」
「なんとか…」
陵太が手を貸してくれて、辛かったけどなんとか立てた。
…でも、身体中が痛い。
「…さて、と」
「ん?」
「なんで、先輩は莉子を助けなかったんですか?」
「え?陵太、なに言って…」
最初は理解ができなかったけど、分かった。
今の言葉は―真波に言ったんだ。
「どうして…目の前でやられてるのに助けなかったのかって聞いてるんですけど」
「…っ」
真波は青ざめた顔をして一歩後ろに下がった。
…陵太は私と真波の関係を知らないからこんなことが言えるんだ。
「陵太、私は大丈夫だから…」
「莉子が大丈夫でも、俺がだめ。…どうしてですか?」
「…そんなの、あなたに関係ない」
初めて真波が言い返した。
「友達だったら、助けるのが普通―」
「陵太っ!!もう、もうっいいから」
ダメ、ダメだよ。その先を言ったら…。
――陵太に嫌われる。
「なんで…。止めるんだよ…」
「ほんとに大丈夫だから…」
――陵太にだけは嫌われたくない。
「…大丈夫」
陵太のシャツの袖をつかんで、下を向いてつぶやいた。