あの日あの時あの場所で。
「この世のなかには、死にたくなくても死んじゃう人もいるんだよ」
でた。
お決まりのセリフ。
だから死ぬな。的な感じでしょ。
「あのさぁ―…」
言い返そうと思って顔を上げたとき、ちょうど目が合ってしまった。
言葉を失ってしまった。
だってその時のこの人の目が―…。
「だからさ、とりあえず生きてみなよ」
「え…?」
「大丈夫!僕が生きてる限り保証するよ!」
なに言ってるの…。
『とりあえず生きてみなよ』さっきから、頭のなかでリピートされている。
生きる…?
生きてみる…?
「この世界に健康で産まれてこれたんだから、幸せだよ」
「…っ」
私は幸せなの…?
「はい」
すっ、と手を出してくれた。
…だめ。
手を伸ばしたくなる。
手に力がはいる。
でも、ここで手を伸ばしたら…。
いつもの日々に戻るんだよ…?
あんな日々に…。