あの日あの時あの場所で。
あの日から泣いたのは初めてだ…。


「僕、陵太っていうんだ。君は?」

「お、大越莉子…」


名前だけいわれてもな…。名字は何なんだろう。

「莉子か!よろしく。陵太って呼んでくれればいいから!」

「うん…。あの、名字は―…」

「ほらっ!行こっ。授業でなきゃ」

「う、うんっ…」

真面目だなぁ。授業でなきゃって。

でもじゃあなんでここにいんだろう?
真面目のくせに。


たったったった、と廃校舎の古びた階段を下りていく。

私の方が上の段にいるのに身長は同じぐらいだから、ちょっとムカつく…。
でか…。

そんなことを考えながら後ろをついていったら、

―ドンッ。

「ぎゃっ!?」

急に陵太がとまったから、ぶつかってしまった。

「な、なに!?急に止まんないでくんない?」

「…もう、自分から死のうとしないでね」

「え…、なに急に…」

「急じゃないよ。莉子は一回自殺をする覚悟を持っちゃってるから、いつでも死のうとすれば死ねるんだよ。…だから―…」

「分かってるって!死なないよ。…絶対に」

「…そっか。ありがとっ!!」

「ううん、…ふふっ」

こんな人のことでありがとって、笑顔になれるってすごい。

私まで笑っちゃうよ。



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