未来の君のために、この恋に終止符を。
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晴樹が迎えに来る前の放課後のこと。
田中くんの普段の様子を見に行ってから晴樹ときちんと会話することはなく、あっという間に終礼は終わってしまった。
待ち合わせ場所に着いて返事をすることがこわくてゆっくり歩いてしまう。
だけど、それでもさほど遠くない距離だったせいでかんたんに中庭に着いてしまった。
木が植えてある並びの端の方、田中くんの姿が見えて、さすがに歩いているのは失礼だからと軽く駆け寄った。
「ごめんなさい。待たせちゃったみたいで」
「いや、僕がはやくに来ただけなので」
手を横に振り、優しく気遣ってくれる。
今までにされたことのない大人な対応につい困ってしまう。
「手紙でも言いましたが、僕は花沢さんのことが好きです」
「っ、」
「図書委員の仕事を丁寧にこなす姿と、3組に訪れる際の無邪気な姿と、どちらも好きになりました。僕と付き合ってください」
田中くんはそう言って優しく細めた目を私に向けた。
単刀直入な、なんのクッションも挟まないストレートな物言いに驚きが身体中を駆け巡る。
きょろきょろと視線を彷徨わせ、逃げそうになる心を叱咤してなんとかその場にとどまる。
そして1度深く息を吸って、吐き出した。
「……ごめんなさい。
田中くんとは付き合えません」
頭を深く下げて、情けない顔を隠した。
これがはじめて受けた告白だったなら、もちろん断ることもはじめてで、どうなふうに言えばいいのかわからない。
傷つけない言い方を選ぶことは難しい。