未来の君のために、この恋に終止符を。
「花沢さん」
名前を呼ばれ、肩がびくりと跳ねた。
唇を噛み締めると、そこだけ温度が変わった気がする。
「理由を訊いてもいいですか?」
そっとうかがうように顔をあげる。
ショックを受けておらず、揺らがないまっすぐな瞳は吸いこまれてしまいそうに綺麗だ。
そこに映る自分の姿が見えると気恥ずかしく、うつむくように頷いた。
「……好きな人が、いるから」
唇が震えて、声も同じように震えた。
絞り出したそれに後押しされるように想いがぶわりと花のようにあふれて、胸いっぱいに広がる。
「誰が相手かわかる気がします」
その言葉に続いて、田中くんは空気を揺らす。
唇が描いた名前にどうしようもなく瞳が潤んだ。
気がついたらそばにいて、なにをする時も一緒で、まるで兄弟のように育てられた。
それは私たちにとって当然のことで、それが幸せで……だけど、いつだったか。
他の人に向ける感情と、彼に向ける感情は大きく違うことに気づいた。
色とりどりのスイーツのように、淹れたてのコーヒーのように、膨らんだ蕾がほどけるように。
太陽が、月が、照らす道のように。
それは様々な色あいの優しさがこめられていた。
私は、晴樹が好きなんだ。