未来の君のために、この恋に終止符を。
それでも腕の一部だけ、小さな枝の幅だけだ。
これくらいなら、少しくらい構わないと思った。
だけど晴樹はそうもいかないらしく、私とは比べものにならないほどショックを受けている。
私に向けられた、涙で濡れたぐちゃぐちゃの顔は、久しぶりに見た彼の泣き顔で。
中学生になってから見ることのなかった姿に、どうすればいいかわからない。
「ねぇ、泣かないでよ」
笑顔じゃない晴樹が嫌いなわけじゃない。
だけどやっぱり、笑顔の晴樹が好きだとは、思う。
笑っていて欲しい、いつだって、幸せがいい。
そうに決まってる。
ひくりとしゃくりあげた晴樹が掌で涙をすくった。
「俺にできることがあったら、言って」
「いいよ、そんなの」
「いいから、なんでも言って。
絶対、なんでも叶えるから」
日の沈んだ部屋は、カーテンが開いていても明かりが射しこむことはない。
どことなく暗い部屋で、真摯な彼の言葉だけが心に突き刺さる。
それがなんだか現実味がなくて、うそみたいで、だから私はうっかり口をすべらせてしまった。
「────じゃあ、私と付き合って」
そう、願ってしまった。
でも、本気で付き合えると思っていたわけじゃない。
むしろありえないと思っていたからこそ、彼が断ることで〝なんでもする〟という話が流れると思った。
それが狙いだった。