未来の君のために、この恋に終止符を。
「ね、無理でしょ?
だから晴樹はなにも気にしなくていいよ」
「……いや、いいよ」
「え?」
晴樹が私を見つめる。
涙に濡れた瞳が、静かに私を映す。
「実莉がそう願うなら、付き合う」
「っ、」
信じられないと、信じたくないと思った。
私は確かに晴樹と付き合いたいと思っている。
心の奥底にずっとあった、欲望だ。
だけど、こんな歪んだ関係を望んでいたわけではなかったのに。
できないことを無理やり受け入れるんじゃなく、元の平等な幼馴染に戻りたかっただけなのに。
晴樹がなにかをしたわけじゃない。
勝手に私が木から落ちたというのに責任を感じての交際なんて嬉しくない。
ああ、だけど、そうか。
そうなんだ。
償いだから、彼は受け入れた。
償いじゃなかったら、────受け入れることは、なかったんだ。
だって晴樹は、私のことなんて好きじゃないから。
これはただの引け目を感じた彼なりの謝罪。
付き合うことは、その間ずっと彼が私に詫びているということになる。
どこにもない、上下完結の決まってしまった、最低な恋人だ。
そう思うのに、こんな形でしか付き合うことができない自分たちの距離に気づいてしまった。
それはなんてもどかしくて、切なくて、哀しいことなんだろう。
それに気づいてなお……ううん、気づいてしまったから。
私は「やっぱりいいよ」と。
「うそだよ」と、言葉を覆すことができなかった。
「じゃあ、今日から……よろしく」
「うん」
どうしても、できなかった。