未来の君のために、この恋に終止符を。
冬服になり、長袖になった制服は私の腕の傷を綺麗に隠してくれる。
だけどそれも体育の時は例外だ。
制服から体操服に着替える際、長袖の体操服は規定で用意されていないこともあり、ジャージを着こむまでは少しだけ傷跡がのぞく。
少し動くと長袖のジャージは暑くなるんだけど、私は傷跡を隠すために脱ぐことはできない。
だって、晴樹が見かけたら、悲しそうな顔をするから。
私自身はどうだっていいこの傷に、誰より執着しているのは彼だ。
晴樹のためだけに、私は常に傷を極力見えないようにしている。
できるだけ素早く、ひとりで着替えを済ませた。
以前までは友だちと共にしていたけど、晴樹を好きな人たちは彼と同じようにクラスの中心的存在。
みんなして私に付き合って敵視されることはないと自分から距離を取ったから、今では私は常にひとりきりだ。
だから更衣室を出る時も誰かを待たせることも待つこともなく、その場を離れた。
体育館に向かう途中、合同で体育をする他クラスの女の子に話しかけられている晴樹を見かける。
冗談を言って、笑いながら「ひどーい」なんて甘い声で言われて。
とても自然で、彼らしい様子にかける言葉が見つからない。