未来の君のために、この恋に終止符を。
「いったぁ……って、え、晴樹?」
顔を歪めた彼女は、自分の腕を掴んでいるのが晴樹だと気づき、驚きから目を丸くしている。
どうしたの、ときょとんとしていて呑気な態度だけど、それどころじゃないはずだ。
「ねぇ、なんて言った?」
「え……」
「なんて言ったって訊いているんだけど」
表情の変わらない晴樹の顔は整っているせいでとてもこわい。
静かに淡々と響く声を向けられることなんてはじめてだろう、彼女は怯えた反応を返す。
「い、痛いって、言った、」
「そうじゃない」
高橋さんが腕を抜こうとしていることをわかっているはずなのに、晴樹は離そうとはしない。
彼女の言葉を切り捨てた。
「気持ち悪いって言った?」
「晴樹離して、」
「実莉の傷が気持ち悪いって?」
「ごめん、やだ、」
ほとんど泣いているような彼女の姿にはっとして、慌てて距離をつめる。
とめに入る前に彼が冷たい声で吐き出した。
「ふざけんなよ」
ふたりの間に入りこみ、強制的に引きはがす。
素直に離れたことで、彼女は腕を押さえてその場に座りこんだ。
うつむいて、肩は揺れていて、泣いているようだった。