未来の君のために、この恋に終止符を。
「実莉の傷は、そんなふうに言われていいものじゃない」
「っ、く……ぅ、」
「俺があの時いやだなんて言ったから、拗ねた態度を取ったから、傷が残ったんだ」
きっとなにも聞いていないであろう高橋さんに対して、言葉を次々とこぼしていく彼の姿に、私はどうすればいいかわからない。
まるで大切なものさえも取りこぼしてしまいそうな、危うい晴樹を見ていられないと思ってしまう。
「実莉の傷は俺のせいで、俺がつけた、傷だ」
そう、彼は顔をぐしゃりと歪めた。
子どもが泣き出す寸前のように不安定で、頼りない。
守ってもらうことになんの理由もいらないような存在の表情だった。
だけど私にはなにもできない。
無力で、存在意義もなくて、なんの価値もない。
幼馴染として、無条件で許されていた手を伸ばす権利さえも失ってしまった。
そんな私にできることなんてなにひとつないんだ。
小さな傷痕が晴樹にとって、周りの人にとって、心を揺らがす大きなものであったと知った。
晴樹にそんなふうに言わせてしまう傷は、高橋さんの言うとおりやっぱり気持ち悪いし、最低だし、醜い私の心の表れだと思った。
ただ、それだけ。