未来の君のために、この恋に終止符を。
帰り道を歩きながらも、そんな失礼なことを考えているというのに、彼はまた「しんどくない?」と私の体調ばかりを気にしている。
ここまでくると、2年前のことが話題にのぼらないのは不思議だ。
だけど、晴樹は決して私に言わない。
それだけはありえない。
大丈夫? なんて。
気にしなくていい、なんて。
私が大丈夫じゃないことも、気にせずにはいられないことも、わかっているから。
まぁ「ごめん」くらいなら耳にすることはあるだろうかとは思ったけど。
でもそれもない。
意図せずして靴の先がそこらに転がっていた石にぶつかった。
まるで子どもが遊びながら帰っているかのようで、実際にこうやっていた頃に戻りたいと思った。
だけど、今はこの場におらずとも私のそばには実例がある。
未来の晴樹のように、過去に戻れてもその時にはその時の自分がいて、未来の姿で行くことになるんだ。
それは、私の望むものとは違う。
本当の意味では、戻れない。
過去は、そういうものだ。
そんなことを考えて、彼の言葉も聞かずにぼんやりとしていたせい。
今度は石をうまく蹴れずに踏んでしまって、上体が揺らいだ。
「っ、」
とっさにのどが閉まり、声はもれない。
そのまま倒れかけた身体は横から伸びてきた腕でかんたんに支えられた。