未来の君のために、この恋に終止符を。
首の下、胸より少し上の部分に回ったその腕は、私の記憶よりずっとしっかりしているように思う。
ぎゅっと抱き締められるようで、触れたところから熱を発する。
唇を噛み締めて、晴樹を見上げた。
ほっと息を吐き出した彼と視線が絡まった。
周りが一瞬、なにも見えなくなって、だけどここは世界の中心なんかじゃない。
私たちは世界を構成する一部でしかない。
だから、そうかんたんにうまくはいかないんだ。
「ねぇ、実莉。
この前から片岡と話してないけど、いいの?」
細く細く、息を吸う。
酸素が薄くて冷たい気がした。
「なにが原因かは知らないけど、せっかく仲よくなったんだから、なにかあったなら話した方がいいんじゃないかな」
わたしを腕の中で包みこんで、そのくせ晴樹はそんなことを言う。
優しいぬくもりが受け入れがたくなった。
ぐっと力を入れて彼から逃れる。
顔をふせるように、なんとか瞳を避けた。
「……原因は、晴樹だよ」
「え?」
「私が片岡さんを避けるようになったのは、2年前のことを知られてしまったから。
そうじゃなかったらこんなことしなかった……!」
アスファルトを黙って見つめる。
人が通っては盛り上がり、えぐられる、その姿は何度となく修正されているんだろう。
心と違い、それだけで綺麗に整うんだ。