未来の君のために、この恋に終止符を。
「……傷なんてなければよかったのに」
ぽつり、と言葉を落とす。
波紋のように広がって、それは波打つ。
「そうすれば、私はもっと生きやすかった」
そう吐き出して、はっとする。
自分で自分の言葉に首を絞められた。
もう痛くないはずの、左腕の傷跡がずきずきと重たく感じて苦しい。
おそるおそる上げた顔は、晴樹の瞳に情けなく映っている。
鏡のようなそれはゆらりと動いて、そしてぎゅっと閉じられた。
少しの間のあと再び開かれるも、それはとても、静かに濡れていた。
「────ごめん」
晴樹はくしゃくしゃに顔を崩して、歪めて、笑っているのかもわからない笑顔を浮かべる。
哀しみをとかしたその表情は、今にも壊れそうに儚かった。
その瞬間、わたしの胸を後悔が襲って、無理やり呑みこむ。
違う。
違うんだ。
私はあんなことを言いたかったわけじゃない。
私は、そんなことを言わせたかったわけじゃない。
それなのにこうやって、私はまた晴樹を傷つけた。
振り回すばかり、迷惑をかけるばかりだ。
「……っ」
謝りたいという気持ちはあるのに、こんな場面でも私は素直になれず、唇を噛んだ。
そしてそのまま、彼をその場に放っておいて、走って家まで帰った。