未来の君のために、この恋に終止符を。




部屋に駆けこんだ瞬間、閉じた扉を背にずるずると座りこんだ。

荒い息を吐き出すと、驚いた表情の未来の晴樹が丸い瞳で私を見つめる。



「どうしたの?」



現在の晴樹にひどいことを言った私を知らないで、なにかあったのかと心配してくれる。

とても、とても優しくしてくれるから、それらが罪悪感を刺激した。



私なんか、晴樹が気にかける必要なんてないのに。

放っておいて、無視して、嫌いになっておかしくないのに。

それなのに、晴樹はそうはできない。



それはなんて、可哀想なんだろう。



「っ、はる、き……」



名前を呼んだ。

それだけで視界は揺らいだ。

だけど許されないから、かき消すようにきつく唇に歯を立てる。



……いっそのこと、血がにじんでしまえばいいのに。



「実莉? なにがあったのか、教えて?」



視線をあわせるように、彼が私の眼の前で同じように座りこむ。

ん? と柔らかい表情で私の様子をうかがって、気にかけている。



その様子に促されて、私はぽつぽつと雨だれのような言葉を落とした。

私と晴樹が付き合いはじめたきっかけを知られたこと、隠していた片岡さんと気まずくなったこと。

そして、



「晴樹に私、ひどいことを言った」



自分で口にしたくせに鋭い痛みを伴う、そんなさっきの言葉のことを話した。

だけどもう1度彼を傷つけることになる気がして、そしてそんなことを言ってしまう自分が恥ずかしくて、思わずそこで口をつぐんだ。






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